二人の話を黙って聞いていた私は、ゆっくり席を立った。



「トイレ?」



すかさず惠子がこちらを見上げる。


今日は瞳の色が、カラコンでゴールドに光っている。



「一番手前、流れ悪いから気をつけてね」



惠子が私に言う間も、直実は続きを話したくって、うずうずしているように見えた。



「まじ? ありがと」





いつも以上に騒がしい教室。





廊下に出ても、何も変わらない。











――誰にも話せないのなら、俺が聞くから











そういえば、香苗の携帯もソフトバンクだったと、ぼんやり思った。
















この最悪な世界から助け出してくれる、唯一の救いに見えた亮太先生は、どこか違う場所に消えてしまった。