「とりあえず一ヶ月な。それでどうしても嫌だったらやめていいから」



「とりあえず、って一ヶ月も?」



「高田。俺はな、どんだけ肩身のせまい思いをしようとも、お前のその服装全てに目をつむってやってるんだぞ?

スカート、髪の毛、それに化粧……、

こないだは煙草だって」



先生が、なにか苦いものでも食べたような顔をする。



「すみませーん」



悪びれることなく、謝ってみた。



「りょーちん~」



どこからか声がして顔を向けると、地味な女子が三人机の後ろに立っていた。


ダサイ合服用のベストに、ダサイ髪型。


ファンデーションも知らないような女子たちが、手作りみたいなクッキーを手に、はしゃいでいる。





なに? こいつら。





ひと睨みする私をよそに、


「おー」


と先生が手を上げるのを見て、

無情に苛立った。



「ちょっと待ってな」



女子たちに言い終わるのを待たず、言う。





「わかった」





かっこよくて、


優しくて、


人気のある亮太先生を、


少しの時間でも自分のものにできるなら、


大嫌いな数学だって、我慢できるような気がした。





「ん? なんだ、高田」



「やってみる。補習」










 先生が、好きだから。