「言うべきかなぁ」


誰にともなく訊いてみる。


「何を?」


返事をくれたのは、惠子。

直実は相変わらず画面を睨んだままで、

香苗はポツポツと、小動物のようにまだ食べている。


「翔にー。翔、好きじゃん、真理子」

「はぁ? 言う必要ないし!」

ようやく携帯から手を離した直実が、声をおとして私に訊いた。


「なに? 絵梨やっぱ中山のこと好きなわけ?」


「ない、ない」

「本当に?」

「ない」


腹を蹴ったら泣き喚いた翔のことを思い出す。

あれは、小学四年生の頃だったろうか。