席を譲ろう、と思うけど、他の人が譲ったりしないかなって思って、なかなか立ち上がれない。


もし譲って、この人が『年寄り扱いするな!』って怒る人だったらどうしよう。


他の人が立つ気配ないし…やっぱり私が譲らなくちゃ。


でも、『どうぞ』って声をかける勇気は出なくて。


黙って席を立って、人混みに紛れた。



……人に席を譲るって、簡単じゃないな。



最初に私に場所を譲ってくれた高野くんは


私のこと知らなかったのに、声かけてくれたんだよね。


やっぱり高野くんはすごい。


私が高野くんにつり合うはずないって、ここでも思い知らされた。