明緒(あきお)ぉ。三木さんがなにか言ってるぅ。まぬけはまぬけでしょ。ほかにどう言えっていうのよねぇ」
 涼子(りょうこ)はわざとらしく、あたしの腕にしなだれかかってくるけど。
 指にぎゅっと力がはいっているから本当は少しこわいんだろう。
 たぶん、これまで意見をされたことなんかないと思うから。
「では問題です」
 突然のことにきょとんとする5人に、人差し指を立ててみせる。
「まぬけ。ほかの単語で言い換えると――――? はい、三木ちゃん」
「んー。愚鈍(ぐどん)?」
 うわ、キッツ。
「うどん?」
 聞き返す近藤ちゃんに、あたしは満腹のおなかがよじれそうだ。
「えと、おたんこなす」「おばか?」「ぐず…とか?」
 みなさん!
 それはどうなの?
 がまんできなくて声をたてて笑いだしたあたしは悪くない。
「やだもう、明緒が変なこと言いだすからでしょ」
 結局、三木ちゃんも笑ったら、みんな笑いだして。
 涼子だけが唇をつんととがらせていた。
「そっちのほうが、ずっとひどいじゃないの」
 そうだね。
 だから――。
 涼子には、もっといろいろな子と、仲艮くしてもらいたいんだ。
 友だちだから。
 大切に思っているから。
 二度と、ひとりぼっちになんかさせたくないんだよ。