その頃のハーヴェイ。
※
アガタに逃げられたハーヴェイだったが、不思議なことに追いかけてきたグールの群れはいなくなっていた。少し歩いたところにあった小屋には鍵かかけられ、水や食べ物を探すことは出来なかったがそれでも護衛騎士の持っていた携帯食を口にし一晩、休めたことで彼の体力は大分、回復した。
しかし朝になり、十人近くに減った護衛騎士達とアガタの降り立った森へと入ったところで――ハーヴェイは再び、現れた魔物の群れに追いかけられていた。いや、追いかけられているだけではなく、護衛騎士が三人ほど犠牲になった。
しかし、騎士を襲った魔物の動きは止まったが、他の魔物は相変わらず追いかけてくる。たまらず、ハーヴェイは怒りに任せて声を荒げた。
「何だ、あの妙な鹿は!?」
ハーヴェイが妙な鹿、と言ったのは頭と脚は鹿だが、胴体と翼は鳥なのだ。しかもその足元の影は、何故か人間の形をしている。
「ペリュトンと言う怪鳥です! 故郷から離れた場所で息絶えた旅人の、霊だと言われていて……自身の影を持たず、人間一人を殺すと自身の影を手に入れられるそうですっ」
「何だと……ふざけるな! おかしな鳥の自己満足で、殺されてたまるか!」
護衛騎士の言葉に、カッとなって振り向き様に叫んだハーヴェイの視界の隅に、眩しい光が飛び込んできた。
驚いて前を見ると優しく包み込む光が現れ、消えて――それを見た瞬間、ハーヴェイはたまらず叫んだ。
「結界だ!」
「殿下!?」
あんな風に光るのを見たことはないが、間違いない。今、見えた光はエアへル国を守ってくれていた結界と同じだ。と言うことは、あの光の中には必ず憎っくきアガタがいる。
そう思い、馬に鞭を打って光の方向へ走らせたハーヴェイだったが――瞬間、目に見えない壁により、突っ込んだ勢いのまま弾き飛ばされた。
「へぶっ!?」
「殿下ぁっ」
結果、馬が倒れ、乗っていたハーヴェイは振り落とされた。
そんなハーヴェイにある護衛騎士は駆け寄り、慌てて馬に乗せ。別の者は馬に乗ったまま、目には見えないが触れば確かにある壁を確かめ、それ以上入れないとため息をついた。
もっとも、足を止めていてはペリュドンの群れに追いつかれる。
それ故、逃げる為にと迂回しようとした護衛騎士だったが、そこでハーヴェイが絶叫した。
「待て、行くなっ……行くなって、言ってるだろうがっ!」
「っ! 我々も、行きますよ!」
前回同様、白い鳥もどきがアガタと獣人の男を乗せて飛び立っていく。
喚くハーヴェイに顔を顰めつつも、護衛騎士達はペリュドンに捕まらないよう、見えない壁にぶつからないように迂回して――森を抜けたタイミングで夜になり、影が出なくなったところでペリュドンの追跡が止んだので、一同はその場にへたり込んだ。
ちなみにハーヴェイはと言うと、喚いていたことで気力と体力を消耗したのか、気づくと意識を失っていた。
そんな自国の王太子に対し、護衛騎士達が「息はしてるし、静かで良いか」と考えていたことを、気絶しているハーヴェイは知らなかった。
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アガタに逃げられたハーヴェイだったが、不思議なことに追いかけてきたグールの群れはいなくなっていた。少し歩いたところにあった小屋には鍵かかけられ、水や食べ物を探すことは出来なかったがそれでも護衛騎士の持っていた携帯食を口にし一晩、休めたことで彼の体力は大分、回復した。
しかし朝になり、十人近くに減った護衛騎士達とアガタの降り立った森へと入ったところで――ハーヴェイは再び、現れた魔物の群れに追いかけられていた。いや、追いかけられているだけではなく、護衛騎士が三人ほど犠牲になった。
しかし、騎士を襲った魔物の動きは止まったが、他の魔物は相変わらず追いかけてくる。たまらず、ハーヴェイは怒りに任せて声を荒げた。
「何だ、あの妙な鹿は!?」
ハーヴェイが妙な鹿、と言ったのは頭と脚は鹿だが、胴体と翼は鳥なのだ。しかもその足元の影は、何故か人間の形をしている。
「ペリュトンと言う怪鳥です! 故郷から離れた場所で息絶えた旅人の、霊だと言われていて……自身の影を持たず、人間一人を殺すと自身の影を手に入れられるそうですっ」
「何だと……ふざけるな! おかしな鳥の自己満足で、殺されてたまるか!」
護衛騎士の言葉に、カッとなって振り向き様に叫んだハーヴェイの視界の隅に、眩しい光が飛び込んできた。
驚いて前を見ると優しく包み込む光が現れ、消えて――それを見た瞬間、ハーヴェイはたまらず叫んだ。
「結界だ!」
「殿下!?」
あんな風に光るのを見たことはないが、間違いない。今、見えた光はエアへル国を守ってくれていた結界と同じだ。と言うことは、あの光の中には必ず憎っくきアガタがいる。
そう思い、馬に鞭を打って光の方向へ走らせたハーヴェイだったが――瞬間、目に見えない壁により、突っ込んだ勢いのまま弾き飛ばされた。
「へぶっ!?」
「殿下ぁっ」
結果、馬が倒れ、乗っていたハーヴェイは振り落とされた。
そんなハーヴェイにある護衛騎士は駆け寄り、慌てて馬に乗せ。別の者は馬に乗ったまま、目には見えないが触れば確かにある壁を確かめ、それ以上入れないとため息をついた。
もっとも、足を止めていてはペリュドンの群れに追いつかれる。
それ故、逃げる為にと迂回しようとした護衛騎士だったが、そこでハーヴェイが絶叫した。
「待て、行くなっ……行くなって、言ってるだろうがっ!」
「っ! 我々も、行きますよ!」
前回同様、白い鳥もどきがアガタと獣人の男を乗せて飛び立っていく。
喚くハーヴェイに顔を顰めつつも、護衛騎士達はペリュドンに捕まらないよう、見えない壁にぶつからないように迂回して――森を抜けたタイミングで夜になり、影が出なくなったところでペリュドンの追跡が止んだので、一同はその場にへたり込んだ。
ちなみにハーヴェイはと言うと、喚いていたことで気力と体力を消耗したのか、気づくと意識を失っていた。
そんな自国の王太子に対し、護衛騎士達が「息はしてるし、静かで良いか」と考えていたことを、気絶しているハーヴェイは知らなかった。