真白の言葉が頭に引っかかりながらも、わたしは家に入った。



「た、ただいまー」



「おう、おかえり!」



おうくんは、リビングで鞄を隣の椅子に置いて勉強している。


ふ、普通だ。


あの時の怒りが全然ない。



「ん? どうかしたか?」



おうくんは、相変わらず不機嫌な様子を見せることなく目をパチパチさせながら聞いてくる。



「えっと……」



「俺の顔に、なんかついてる?」



「う、ううん! なんでもないよ。今日のご飯、何にしよっかぁ。なんか、リクエストある?」



あの時のことを探るべきではないだろうなと思い、わたしはテーブルの席につきながらそう尋ねる。



「んなこと言われても珠華は、100%の確率で美味いもん作ってくれるだろー」



おうくんは、笑っていた。
あの時のこと、もう全然気にしていないのかな。

それとも、気にはしているけどそう見せないためにわざと朗らかな調子になっているのかな。


分からないや。