「おうくん、起きて起きて」
幼さの残った、可愛らしい声が俺の耳をくすぐった。
「あぁ、珠華……」
珠華はもう着替えたのか、昨夜のピンクのパジャマではなくて制服に着替えていた。
うん……珠華が着替える前に起きなくてよかった……。
いや、良くない。
珠華が着替え終わった後に自分から起きる、というのがベストだったかもしれない。
制服姿の珠華がドアップになっているから、昨日とは違ったイメージで落ち着かない。
「ほら、早く起きないと! 朝ご飯できたし、冷めちゃうよ」
俺はのそのそと、珠華の後をついていく。
テーブルには既に、俺と珠華の朝食が置かれてある。
「じゃ、いただきます」
「いただきます」
ベーコンエッグの香ばしい匂いが、俺の鼻先をかすめた。
……美味い。やっぱ美味い。
珠華って、なんでこんなに料理が上手いんだろう。
俺が、全然手料理というものを食べないせいか?
はじめてここに来た時のオムライスも、珠華には気づかれなかったみたいでよかったけれど、マジで涙が出るくらいの美味しさだったし。