俺は洗面所に駆け込み、深呼吸をした。
いくらなんでも意識しすぎだろ、珠華はただの同居人だ。他のなんでもないんだ。
それに、珠華が俺と同居しているのは一言で言えば家庭の事情ってやつ。別に、珠華を家に無理やり置いているわけじゃないし、好きで置いているわけでもない。
そのはず、そのはずなんだ。
それなのに、珠華をああやって見ちゃうと、今までになかった気持ちが噴水のように湧き出てくるんだよなぁ。
「おうくーん」
げげっ!
こういう時に、珠華が来るのかよ。
洗面所のドアが開いて、案の定そこに立っていたのは、さっきと同様、ピンクでフリフリのパジャマを着た珠華。
「タオルなかったでしょ」
「あ、さ、サンキュ……」
「……ん?」
珠華が、俺の様子が変なことに気にしているようだ。
「どうしたの? なんか、顔赤いよ……?」
「なんでもねぇ! お、お前……学校の宿題ってやり残してないの?」
「あっ、英語のが残ってたんだった!」
珠華はそう言って、ドアも閉めないで駆け出して行った。
……なんとか乗り切った。
慣れないとな、こういうのには。