「おうくん、その教材は?」
家に帰った後、おうくんが教材の整理をしていたところが目に入った。
「いや、別に特別なもんじゃない」
どんなものか、あんまり詳しくは見れていないけれど、なんだか難しそうなものだった。
……わたしじゃ、絶対無理だな。
「俺なんかより、ずっと珠華が偉いのは確かなんだよなぁ」
「ん……?」
おうくんが今何を考えているのか、わたしには分からない。
「俺なんか……俺なんか、ここ来たことだって、学校のことだって……」
おうくんの声は、どんどん小さくなる。
それからブツブツと話し出して、もうわたしにも聞き取れない。
「どうしたの?」
「あぁ、ごめん。なんでもねぇよ」
何を言っていたのかは気になるけれど、無理に深掘りなんてしても良くないよね。