「二人には、息子の代理人としてお金を受け取りに来た会社の後輩という設定で仕事をしてもらうね」

男に説明されたことを、ミシェルとアイリスはメモをとっていく。ミシェルはポケットに入れられたレコーダーを再生させて会話を録音し、アイリスは男に見つからないようにこっそりカメラと盗聴器を仕掛けていた。

「それで、こういったトラブルが起きた場合はーーー」

男が説明をしていると、男のスマホが音を立てた。誰かから電話がかかっている。男は「ごめんね」と言いながら電話に出て、ミシェルとアイリスは顔は笑顔を作りながらも、心では誰からの電話なのか耳に神経を集中させる。

「マイクさん、新人の二人は期待できそうです。ええ、また荒稼ぎできますよ」

仕事の話をした後、最後に男はそう言って電話を切った。アイリスが「マイクさんってどなたですか？」と訊ねる。男は緊張したように口を開いた。

「この詐欺グループを作った人さ。裏の世界じゃかなりの有名人なんだけど、この詐欺グループでマイクさんに会えたのはほんの少数。だから、ほとんどがマイクさんの顔や住所などを知らないんだ」