「ほら、詐欺に関わらず犯罪って人通りのないところでされるってイメージだろ?警察もそう見立てて捜査をするんだ。だから、堂々としてた方が見つかりにくいんだよね」

「灯台もと暗しってやつですね」

ミシェルもそう言い、相槌を打つ。これからミシェルとアイリスは詐欺師としてここで働くのだ。二人が行うのは被害者宅へ行き、現金を受け取る「受け子」というもの。

「正直、女の子が来てくれて助かったよ!詐欺グループって男しかいないし、目の保養って大事だよね〜。二人とも可愛いしさ」

男が二人を見て鼻の下を伸ばし、アイリスは「あはは……」と引きつった顔を見せる。ミシェルは冷静に「結婚詐欺では女性の例もありますが、こういったオレオレ詐欺では女性が犯人とは思われにくいですから」と答える。

男に自分たちが働く部屋を教えてもらい、次に仕事の仕方を教わることとなった。建物の二階の一室からは、電話の音がずっと鳴り響いている。かけ子が詐欺の電話を片っ端にしているのだろう。