ミシェルはなるべく恐怖という感情が表に出ないように集中する。男たちは怯えれば怯えるほど喜ぶ。何もされないためには、素早く行動するためには、冷静でいることが必要だ。

男たちとミシェルが睨み合っていると、コツコツと靴音が響いてくる。すると男たちがミシェルから視線を逸らし、姿勢を正して礼をした。

「マイクさん、お疲れ様です!!」

「うむ。ご苦労」

ミシェルとアイリスと前に紫という派手なスーツを着た四十代ほどの男が現れる。その顔に表情はなく、視線だけで他者を圧倒していた。

「あなたがこの詐欺グループのリーダー……」

ミシェルの呟きに、マイクは「そうだ」と答える。そしてミシェルとアイリスの顎を掴んでその顔を覗き込んだ。アイリスが悲鳴を上げ、ミシェルの肩がびくりと震える。

「二人とも、美形じゃないか。殺すのはもったいないな。こいつらは生かしておいて金持ちに売り飛ばすか、売春婦として働かせるかのどちらかにしよう」