「……あのお客さん、出禁になってくれないかな……」

「……なに社畜極めたやつが言う上司の陰口みたいなこと言ってんの」

「うわっ」



あ、そうだ。この人がいたこと忘れてた。


リビングのドアを開けて気の抜けた声を出した瞬間、目の前から呆れたような言葉が飛んできたものだから、危うく叫び声をあげるところだった。




「……んだよ、その声」

「いや、そういえばいたなって思いまして」

「お前……人にメシを作ってもらいながら」

「あ、あはは……」




忘れてたものは仕方ないと思う。

……なんて言っても切れ味最高の目で睨まれそうだからやめておく。



どうやら千住サマはお風呂上がりらしく、首にタオルを巻いて、髪からはぽたぽたと水滴が滴り落ちていた。


私もお風呂先に入ろうかな。あ、でも夕飯も食べたい。


んー、どっちにしよう。迷う。