目を白黒させながら、弾かれた額を抑えて、デコピンが繰り出された骨張った手を見つめていれば。



「お前はほんっっっっっと、自分と周囲の環境と感情に鈍感だな。もはや愚鈍すぎて笑う」

「今世紀最大とも呼べる罵りをどうも……」



圧倒的に場違いな罵倒をくらってもなお、脊髄反射と呼ぶべきか、呆けたまま口が勝手に動いた。

そのおかげで皮肉な返しになってしまったけど、今回は気にならなかったらしい。



「生きる価値なんてお前自身が決定できる代物じゃないだろ。それは生きてる過程でのお前と周囲との関係、それに環境だろ。氷高真生には葉柴凛琉っていう仲良い友達がいて、千井光流っていううるさい……うるさい、……えーっと、ペット?がいて、」

「あのほんと、千井の扱いがひど、」


「─────氷高あかねっていう、生き方を参考にしたいほどめちゃくちゃすげえ大人がいた。その結果だけで、生きてる価値なんて充分すぎるくらいあるだろーが。お前が勝手に、氷高真生に〝生きてほしいと思える価値〟があるかないかを決めつけるな」