……持ってない。持てるわけがない。

どれだけなろうと努力しても、結局、おままごとみたいな真似事にしかならなかったから。



「……でも、ちゃんとできてたって、あかねさんの真似をすることができたって思わないと、私が今までしてきた生き方は、どうなるんですか?」



こわかった。うまくできていないとわかっていたけれど、それでも、否定したくなかった。



「……それまでの、あかねさんがいなくなってからの私の、生きてる価値が、なくなっちゃうじゃないですか」



生き方を否定したら、それまでの私の存在価値が総崩れしてしまいそうで、こわかった。

〝氷高真生〟はいらないと言われるのが、とても、とてもとても、こわかった。


……そんな風に、落ち込んで、澱んで、濁った心とともに、涙まで落っこちそうになったとき。




「……このバカタレ」

「あいたっ!!」



ぺちん、と本日二度目のデコピンが、額にクリーンヒットした。