「いま思えば、あれは恋情に似た憧憬と依存だったんだなってわりと客観視できてる。あの人の生き方がうざったいくらいに眩しかったから、俺以外の問題児も、ぜーいんあの珍妙なセンセに懐いたんだなってことも今ならわかるし」

「ち、ちんみょう……」



苦笑いしながらも、確かに珍妙だった、って納得できることはいくつもあって。


たとえば、そう。

私が家族のことを思い出して泣いていた時に、コンビニまで競争しよう!と言い出したことがあったり(私が勝って肉まん奢ってもらった)、

私が家に帰るのが遅くなった時は、家の近くでボヤ騒ぎがあったみたいだけど見てきた?なんて聞いてきたり(ちょこっと見たのでそれを話した)。



他の人なら、まずそこ聞くの?と思うような変化球(それも超豪速球)を投げてくるから、いつのまにかあかねさんのペースにのせられていた。



「でも、今まで俺や千井や葉柴にしてきたこと全部、氷高あかねの意志じゃないだろ」