最初は茫然自失になっていたし、自分を見失いそうにもなった。


けれど、そこから生き方を変えることはしなかった。否、どうしてもできなかった。



だって、私の憧れの人には、ちがいなかったから。

いちばん尊敬している人に、ちがいなかったから。


あかねさんから学んだことは、たくさん、ほんとうにたくさんあって。

生き方も、初対面の人との話し方も、人の表情を読み取る方法も、ぜんぶ全部、彼女が教えてくれた。


第二の母親と言っても、過言じゃなかった。


……そんな人の〝真似〟をして生きていたから、時々、どんな顔をしていいのか、わからなくなったんだ。

〝マイペース〟だって言われて。


私は、自分のペースで生きてはいないから。

氷高あかねの真似をしている、だけだったから。



「……惨めに、見えます、かね。自分の生き方がわからなくなったから、他人の真似を、するだなんて」