ただ、


 「落ちぶれた京に見切りをつけて、これからは山口こそがこの国の中心であると、京の公家たちが多数私を頼りに下向してくる」


 御屋形様の言われる通り。


 この街の輝きに吸い寄せられる虫のごとく、京の公家どもが頻繁に御屋形様の元を訪れていた。


 それは一時的な滞在ではなく、山口に住み着いてしまう者たちも少なくなかった。


 京風な物へ対する造詣が深い御屋形様が、そのような者どもを丁重にもてなすあまり。


 連中は増長し、屋敷の内外でやりたい放題。


 我ら重臣に対しても、特権階級意識丸出しの上から目線で無礼千万。


 大内家に寄生する公家どもの評判は最悪なものとなり、重臣たちの間にも不満が溜まっていた。


 なんせ御屋形様が、奴らを手厚くもてなされるのだ。


 日々の遊興三昧がようやく収まって一安心と思いきや、今度は寄生虫のような公家どもを養うための財源確保が必要となった。


 再び周防の国は増税せざるを得なかったのだ。