「徹!」
私が言う。
「渚?!どうしたの⁉」
「…っ、ぐすっ、あいつらに…」
悪口を言っていた二人を指さす。
あんな奴らに、泣かされるつもりはなかったのに。
「大丈夫だよ、はい、ハンカチ」
徹がうさぎの刺繍の入ったハンカチを渡してくれた。
それは小さい頃に私があげたものだった。
「お前ら、何やってんの」
徹の視線は冷たい。
「あ、王子~」
「その名前で呼ぶな、気色悪い」
「やだー、冷たい‼でもそんなクールなとこも素敵♥」
「てめえらの御託はいい。何を話してたんだ」
「ただの渚の悪口ですよ‼」
「…チッ」
徹は黙ってしまった。唇を強く噛み締めている。
「あんな奴ダメだって‼気色悪い‼」
「それよりもぉ、ぁゃの方がカワイー♥でしょ?」
「あんな奴よりぃ、ぁゃとかぅちの方がいいって‼」
「てめえらなんか眼中にねえんだよ。渚の悪口は言うな。」
いつもとは違う、刺々しい言い方にゾクッとした。
私の悪口を言っていた二人は、すごすごと去って言った。
前言撤回。あいつは、はちみつなんかじゃないな。
栗だ。栗みたいだ。
外は刺々しいが、中は甘い。
でも、栗って感じの顔じゃないな。
あ、そうだ。マロン。
西洋的な王子様には、マロンがお似合いだ。