朝。ベッドからむくりと起きる。


すぐに朝ごはんを食べ、制服を着た。


鏡の前に立つ。


(よし、今日も決まってる‼)


おだんごヘアーが可愛く決まっていた。


(せめて、これくらいは…あいつに似合う美人に…!)


鞄を持って家を出る。


「行ってきます」


「行ってらっしゃい」


家を出ると、徹がいた。


「いやー、昨日は声が聞きたかったから」


なんでそんなにけろっとしていられるんだ…


「渚、今日も可愛いね‼」


「なっ、何よ‼ゴマすっても意味ないんだから‼」


えへへ、と笑って徹が先に学校に行くね、と言う。


そんな徹を尻目に、こう思う。


(ああ、もう、大好き‼)


そう思うと足早に学校に向かう。


「おはようございます」


先生達の声を背に、走ってクラスに向かった。




クラスに入ると、徹が他の女の子と話している。


(何よ…)


(昨日は「声が聞きたかった」とか言ってた癖に‼)


もしかして、昨日のことは夢だったのだろうか?


そう思いながら鞄から教科書を出す。


「………でさ、………」


徹の声が聞こえてくる。


一緒に話している女子の声と混ざって。


「そういえば」


女子の誰かが声を出した。


「徹って、好きな人いるの?」


なにそれ、すごく気になる。


聞いていると分からないようにこっそりと聞き耳を立てる。


それに対する徹の答えはこうだった。


「いいよ、名前だけ言うのも面白くないし、条件でね」


徹が人差し指を立てる。


「一つめ。このクラスの女子の中にいる」


女子が、キャーっと黄色い声をあげた。


(よし、一つめはクリア)


徹が次にピースのマークを作る。


「二つ目は、鼻が小さくてとっても可愛い‼人」


えー、鼻とか小さくないしな~。


そんな女子の声が聞こえてくる。


(二つ目もクリア…かなぁ?)


前に、部活で言われた事を思い出す。


「三つ目」


徹が三本指を立てて、言う。


「よくおだんごヘアーをしている人」


どきん、と胸がなる。


おだんごヘアーをして学校に来ている人なんて、数人しかいない。


(いや、でも佐々木さんとか蓬田さんとか…)


「四つ目」


今度は指を立てずに、腕を組んで徹が言う。


「俺の、1人だけの幼なじみ」


私のこと、言ってる?


冷静な判断ができない。


脳がオーバーヒートしそうだ。


「五つ目。これで最後ね」


徹は人差し指をぐるぐると回す。


「俺が好きなのは、あの人」


人差し指が、方向を示した。


指が向いたのは、私の方だった。


「俺の好きなのは、青山渚。」