私、青山渚《あおやまなぎさ》は、猛烈に困っている。


というのは、幼馴染みの赤羽徹《あかばとおる》から…

   


    お姫さま抱っこを、されているのだ。



(どうしてこうなったの…⁉)


というか、だいたいいっつもこいつはこんなんだ。


こないだはクラスメイトの前で公開告白。


その前はLINEで「好きだ」と告白。


そして、今。


ちょっとくらい膝を擦りむいたって誰も気付きやしないのに…


「渚、大丈夫?」


徹が私の顔を覗きこんで言う。


茶色の髪が風にはためき、光に透けている。



(イケメンなのが余計にムカつく…‼)


そう。こいつ、イケメンなのである。


立てばイケメン、座ればイケメン。歩く姿は王子様。


なんて言ったのはB組の男子だっただろうか。


「ねー、なぎさー。答えて!」


「…とりあえず、下ろしてくれない?」


私がそう言うと、徹はあわててこう言った。


「渚?!大丈夫⁉ちゃんと立てる?」


「私は赤ちゃんじゃないっての」


「大丈夫⁉無理しないで!」


いや、そんなこと言われてもちょっと擦りむいただけだし…


そう思いながら曖昧に笑う。


ほら、周り見てよ。


女子も男子も黄色い声あげてんじゃん。