「は？」

何それ、と言いたげな目をアーサーやマルティンが蘭に向ける。桜木刑事が「まあ、当たりかもしれないね……」と言い防犯カメラの映像を見せてくれた。

「由美子さんがひき逃げされる瞬間がしっかりと映っているカメラだよ」

買い物袋を手にした由美子さんが歩いている。すると、背後から住宅街を走行するには恐ろしいほどの猛スピードで一台の車が走ってきた。黒のセダンだ。車は由美子さんに気付いてブレーキを踏むものの間に合わず、彼女を轢いた。由美子さんは地面に叩きつけられ、車は停車する。そして中から人が降りてきた。

「あれ？この顔、どこかで……」

ブランドもののワンピースを着た女性を見た刹那、圭介が記憶を辿り始める。蘭は「マルティンの家でたまたま見た西園寺グループのパーティーに映っていました」とすぐに答える。桜木刑事は「その通り」と言い写真を取り出して蘭たちの目の前に置いた。

「彼女の名前は、西園寺玲奈（さいおんじれな）。西園寺グループの社長の娘だ。ちなみに車の免許は持っていない」