あの遊びをしなくなってからというもの、昼休みが暇で仕方ない。


 ターゲットを探して接触したり、作戦を考えたり、新しいターゲットを見つけたり。


 俺の学校生活はそれでできていたのではと思うほど、その遊びで染まっていた。


 だけど、藤枝さんと出会って、一ミリもそれをしようとは思わない。というか、そんなことをしていたと、藤枝さんに知られたくない。


 それにしても暇だ。することがない。


「夏輝」


 無意味に数学のノートを眺めていたら、名前を呼ばれた。


 顔を上げると、蒼生が悪い笑顔をして立っている。


「あんなこと言ってたくせに、あの子といい雰囲気になってるみたいじゃん」


 からかうように言ってくる。


 どうやら俺と藤枝さんが一緒にいるところを見たらしい。


 だけど、俺はそんな気がないから、蒼生との温度差がひどい。


 俺は反応しないで、ノートに視線を戻す。


「遊びで近付いてるわけじゃないから」
「まだそんなこと言ってるの? 夏輝があれを提案したのに」


 蒼生は不服そうに言う。


 まあその通りなんだけどね。



 俺が女子に告白させるという遊びを始めたのは、些細なことがきっかけだった。


 高校生になって、俺は数人に告白をされた。でも恋愛に興味がなかったし、特に気になる子もいなかったから、すべて断った。


 それはなかなかに苦痛で、どうにか楽しいことにできないかと考えた。


 そして思いついたのが、告白してくるように仕向けて、断るゲーム。さらに、それを賭けにする。