偶然プレゼントしたものに対してお礼を言うために待ち伏せされるのは、困るだろう。冷静に考えればわかるようなことなのに、俺は今まで気付かなかった。


 藤枝さんと出会って、自分らしくないことばかりしているような気がしてくる。


「柿原君って律儀なんだね。気にしなくてもいいのに」


 そして途切れる会話。


 緊張しているのか、言葉のキャッチボールができない。


 少し前まで、まるで詐欺師のように言葉を並べて遊んでいたのが嘘のようだ。


「柿原君の口にあったかな?」


 俺がなにも言わないでいたら、藤枝さんが問いかけてくれた。


「めちゃくちゃうまかったよ」


 小学生のような感想に、笑えてくる。


「よかったあ。柿原君の好みも聞かないで押し付けるように渡しちゃったから、ちょっと気になってたの」


 うん、俺の悩みなんてどうでもいいね。


 藤枝さんの笑顔が見れるなら、なんでもいい。


「柿原君は、私を待っていたんだよね?」
「うん」


 本当にコミュニケーションが下手になっている。ここまで下手になるとは、自分でも驚く。


「よかったら、一緒に教室行かない?」


 いやいや、これ以上一緒にいたら、俺がどんどんかっこ悪くなるんだが。


「いいの?」


 それなのに、思っていることと出てきた言葉が真逆だ。


 もう、自分がわからない。


「私が聞いたんだよ?」
「そうだったね」


 そして俺たちは並んで教室に向かった。