目の前の女子は、少し俯いて、手を震わせながら俺に言う。


「急に呼び出して、ごめん……私、あの……柿原君のことが、好き、です」


　何度目か知らない、女子からの告白。


　俺は口元がにやけてしまいそうになるのを必死に堪える。


　彼女が告白してくるように仕掛けていたため、この状況はとても面白いのだ。


「ごめん、俺、君のことそういうふうに見たことなくて……これからも、友達じゃダメかな」


　慣れたように口から出てくる嘘。


　彼女は泣きそうな、だけどどこか緊張から解放されたような顔で笑う。


「そうだよね……聞いてくれて、ありがとう」


　彼女は走って俺から離れていった。彼女と入れ違うように、陰に隠れていた悪友の蒼生が姿を見せる。


「今回は一週間かあ」


　蒼生は彼女が走って行ったほうを見て笑うと、肩を組んできた。


「どんどん早くなってくね。やっぱり慣れた？」


　まるでアニメに出てくる悪者のような、悪い笑顔を浮かべている。


「出すもの出してもらおうか」


　しかし俺も似たような、勝ち誇った顔をする。さらにバトル漫画の悪役のような笑い方をしているから、俺がラスボスとでも言おうか。