「友達?」
「うん」
「私と?」
「そうだよ」
「いいの?」
「なんで?」
「だって…………私、友達なんて出来たことなくて、こんなんだから。また君を、怒らせるかもしれない」
「だって…………仕方ないんだろ?」

 孤独より、誰かがそばにいてくれる方が、絶対いい。あいつだってきつと、目を瞑る最後の瞬間まで家族がいてくれたことにほっとしている。

 そんな、表情をしていたように、僕には見えた。

「なんかさ、死ぬのより生きてる方がきっと辛いと思うんだよね。……あ、また、余計なこと言っちゃった。ごめん」
「いいよ、べつに」

 彼女の言葉は、僕の猫の死を侮辱しているようには聞こえなくて、当たり前にそれに対して怒りなんてものは起きてこなかった。ただ、むしろ、会ったばかりの彼女に同情さえしてしまっていた。

 いつの間にか、雨が止んでいた。鼻の奥がむずむずしてきて、一つくしゃみが出てしまう。

「ごめん、僕、帰らないと風邪引きそうだ」
「うん」
「また、会える?」
「もちろん」
「いつ?」
「そうだなあ、今度また雨が降った時。土曜日か日曜日で。十三時にここに集合っていうのはどう?」
「うん、いいね」

 今はちょうど梅雨の時期に入っていて、連日雨だ。きっと土曜日か日曜日に雨が降るのも、そんなに待たなくてもいい。すぐにその日は訪れる。

「じゃあ、またね」
「うん、じゃあ」