「私ね……なんか、発達障害って言うの? それなんだ。人の気持ち、自分では考えてるつもりなんだけど、いつも人を怒らせることばっかり言っちゃう。悪意はないの。でもね…………お医者さんからそれを聞かされた時、ほっとしちゃったの」

 なんとなく聞いたことがある言葉だった。だけど、ピンとは来なかった。

「仕方ないんだってさ。人とちょっと違うのは、病気のせいなんだって、自分を納得させられるじゃない? でもさ、やっぱり時々、そのことが無性に悲しくなるんだよね。特に雨の日って、空が暗いでしょ? 気持ちもそれと同様に沈んじゃうから」

 話の内容とは裏腹に、彼女の声は明るかった。多分、これは笑って話すことじゃない。

 自分が他の人間とは違うと、専門家からレッテルを貼られたも同然なのだから。それくらいなら、僕にも分かる。だけど彼女は、相変わらず笑っている。

「ペットが死ぬって、悲しいよね。ペットって、家族って言うから」
「うん……」
「ごめんね」

 その時初めて、彼女の笑顔が、笑顔ではないように見えた。

「あのさ。ペットは無理だけど……友達ならなれるよ」

 彼女の横顔が酷く寂しく見えて、僕はついそんなことを口走っていた。それになんだか、あいつが僕を彼女に会わせてくれた気がした。

 その意味は分からないけれど、なんとなく僕はそう感じた。