とっさに壁の文字を手で隠すと、後ろから声がした。

「どこの可愛い泥棒だ?」

振り返る。そこにあったのは、赤い目をした優しい笑み。

「ルナ…っ!」

驚いて、声が出なくなった。必死で言葉を探す。あんなに会いたかったのに、いざとなると、言葉が頭から飛んで行った。

「どうしてここに?」と私。

「それはこっちの台詞だ。どうしてここに?」

ルナは壁に手を突き、私に迫る。整った顔つき。

なんて破壊力だろう。ルナの耐性が弱まっていたせいで、もろにオーラに飲まれていく。

「それ」
「えっ?」

隠していた手から、文字が見えていた。

“スキ”。

不器用な私の字で、そんなことが書かれている。

「これは、その! えっと!」

恥ずかしさの限界突破。顔が熱い。多分、沸騰してる。

動転する私にルナは微笑む。そして私の頭をなでた。

「夜はまだ長い。少し話すか」