「おかげでうまくいった。やっぱりキミは幸運の女神だったようだね」

 伊万里様の帰って行った社長室で、陽臣さんは私に言った。

「キミの協力、感謝する」
「別に、私は協力したつもりは……」
「いくら欲しい?」
「……はい?」

 私は耳を疑った。

「キミを拘束して、伊万里様との契約までこぎつけた。成功したから、報酬と詫びだ。いくら欲しい?」
「どういうことですか?」
「だから言ったろ。世の中、結局お金なんだって」
「いりません!」

 私は陽臣さんを睨んだ。これでもかっていうくらい睨んだ。

「別に私はあなたに協力したつもりはありません! 伊万里様への和菓子を制したのだって、伊万里様の健康を思ってのことです! それに、あなたが伊万里様に仰った私のこと、すべて甚八さんの受け売りじゃないですか! 成り行きで陽臣さんの部屋に居候させていただいてましたが、もういいです! 出て行きます!」

 私はずかずかと大股で東丸宮商事の社長室から出て行った。こんなところに二度と足を踏み入れてたまるか!