フカフカのあたたかな布団に包まれて、私はとても幸せです……すやぁ。
 すやぁ……? ここはどこ?

 目を覚ますと、まだ辺りは暗かった。おしゃれすぎる和風な間接照明が、ぼうっと辺りを照らす。そうか、ここは極楽浄土……じゃなかった、そういえばトンデモ弾丸旅行(仕事)の最中なんだった!

 部屋の隣からはジャバジャバと音がして、不思議に思った私はその戸をそうっと開けた。そこには、掛け流しの露天風呂があった。素敵なお風呂……。私はその湯煙に視界を遮られて、そこにいる人物に気づかなかった。

「覗きも趣味なのか?」

 突然聞こえた声に、ピクンと肩を揺らした。湯煙の向こうにうっすら、大きな背中が見えた。

「ち、ち、ち、違います! お風呂あるの知らなかったし、でも景色綺麗だなぁって……」
「じゃあ、お前も入るか?」
「え?」
「急いで出るからそこ閉めろ」
「あ、いや、私はいいので、ごゆっくりーっ!」

 勘違いも甚だしい。お前も入るかとは聞かれたけれど、まさか一緒に入る訳ないじゃないか。冷静になればすぐ分かることなのに……。
 温泉に浸かっていないのに、私の体はどんどん火照っていくのだった。