「だから触んなって言ったのに」

「へ……?」


「さわったら、タガが外れてこうなるってわかってたし。……あのな、ひなが思ってるより、俺、相当ひなのこと好きだから。ぜんぜん、あんなことやこんなことしたいってひなで考えるから、ふつうに」




何のこと、と考えて。
ふと思い出した、 “おやくそく” 。

あの “おやくそく” って、もしかして……。





「ぜんぶ、私のため、だったんですか?」

「……今さら?」

「っ、ほんとに?」





部屋に入れてくれないのも、さわるなっていうのも。私を傷つけたくない、から……なんて。

そんなの。




「っ、じゃあ、狼くんは私のこと、いつから……っ」

「────そんなもん、最初からだよ」




うそだ。
でも、うそじゃない。



あわてて、狼くんの腕のなかから抜け出して、冷蔵庫に貼り付けてあったあの “おやくそく” の紙を持ってくる。




「狼くん」

「なに?」




「……わたし、狼くんにさわってほしいです」