あの日以降、アイリスはこれまでに増して朝早く訓練場に行くようにした。レオナルドは大体夜明けの一時間前にやってきて、一時間ほど剣を振るって夜が明ける前に戻るのが日課のようだ。

 そして、アイリスが現れると必ず「相手をしろ」と声を掛けてくれた。つまり、この痛みは度重なる朝練習による全身筋肉痛だ。

「おい、大丈夫か?」

 今さっきアイリスに強力な打撃を食らわせた本人であるカインが心配そうに手を止める。
 カインはアイリスと同じく第五師団に配属されていた。

「大丈夫、ちょっとした筋肉痛です。カインは益々打撃が強くなってきましたね」

 アイリスは慌てて大丈夫だと片手を振ると、今の打ち合いの感想を伝える。

「そうかな?」
「はい、そう思います」

 アイリスが頷くと、カインは嬉しそうに笑って頬を指で掻く。