レオナルドはそんなアイリスの姿を見て、愉快げに口の端を上げた。
 そして、構えていた剣を下ろす。

「お前、剣を振るうときに一瞬だけ太刀筋の向かう方向に視線が向いているのに気付いているか?」
「え?」
「このままだと、一生掛かっても俺には当てられないぞ。なにせ、お前は自分でどちらから攻撃するか目で示しているからな」

 視線が向く?
 そんなことは一緒に訓練している騎士からも、弟のディーンからも一度も指摘されたことがなかった。

「直すべき部分は多いが、まずはそれの修正からだな。もう一度そこを意識して掛かってこい」

 そこでようやくアイリスは気付いた。
 レオナルドはちょうどいいから相手をしろと言いながら、実際はアイリスに稽古を付けてくれているのだ。

 そもそも、アイリスの実力ではレオナルドの剣の相手として完全に力不足なのだから相手など務まるはずもない。