それを合図に、アイリスはレオナルドに飛びかかった。カキーンと刃先を潰した模擬剣がぶつかり合う音が周囲に響く。
 一太刀交えただけで、新鮮な驚きを感じた。

 ──凄い。全然実力が違うわ。

 アイリスは新人騎士の中で平均的な実力だ。そのアイリスが全力で攻撃を仕掛けているのに、全てを難なく受け止めるレオナルドは顔色ひとつ変わらない。
 それに、よく見ると足も動いていないし、片手しか使っていない。

「軽いし、遅い」

 一言そう言われたと思ったら、腹部に衝撃を受けてアイリスは地面に叩きつけられた。

「ぐっ」

 思わず低い呻き声が漏れる。

 ざざっと背中が地面を擦り、視界に明らみはじめた空が見えた。打たれた腹と打ち付けた背中がズキリと痛んだが、すぐに歯を食いしばってよろよろと立ち上がる。
 そして、レオナルドに向かってもう一度剣を構えた。