私は、伊月の顔がまともに見られなかった。
酷い顔をしているであろう私を、見られたくなかったから。
「それは········、お前は······夕凪は、俺がホントに好きなのか·······?」
初めて、好きな人から言われた名前。
自然と胸が高鳴る。
「そうって、さっきから言ってるじゃん」
嗚咽を漏らしながら言う。
その瞬間私は、伊月に抱きしめられた。
強く私を抱きしめたその腕は、微かにふるえていた。
「夕凪、ごめん」
『ごめん』と何度も繰り返す伊月。
「夕凪に告白された時、俺、すごく嬉しかったんだ」
「え········?」
「一年生の時からずっと、俺は、
夕凪が好きだった。
だから、夕凪に告白されて、スゲー嬉しくて。
でも、俺、付き合うの初めてだから、
どうしたらいいのか、分からなかった。
こんなに誰かを好きになるのも初めてで、
カッコ悪いところを見せたくなくて。
冷たい態度ばっかりとってた。
このままじゃだめだって思っても、
何も思いつかなくて······。
こんなこと、俺には言う資格なんかないけど、
俺は、俺は·········」