伊月は、私の腕を掴んだまま、話す。



「ねえ、何であいつといたんだ?」



さっきの苛立ちがこもった声が嘘かのように、弱々しく、悲しそうに話す。



何でそんな風に話すの?



悪いのは、伊月のほうなのに。



まるで、悪いのは私。



「何で、何で、そんなこと言うの!?」



押さえようとしているのに、今まで思っていたことが、口の中からするすると出てくる。



「伊月が悪いんじゃない!

いつも、デートに誘うのも、帰りに誘っているのも私。

好きって言うのも私。

話しかけても、無視するし。

手だって、繋いでくれないし。

名前も呼んでくれないし」


すぅと、息を吸う。



「バカみたいじゃない!

一人で考えて、辛い思いをして。

だから、伊月を試そうと思ったの!

初め、羽音に言われて半信半疑でやって。

そしたら、今日、伊月から話しかけてくれた。

ホントにホントに嬉しかった。

好きだなって、改めて思ったの!

いくら、冷たくても、無視されても、

それでも好きなんだって」



私は、話の途中から泣いていた。



「ねえ、伊月はホントに私のことが好き······?」