「ぜんぶ今すぐ直して!じゃないと生徒指導室だよ」


用紙にハギくんの名前とクラスを書きこみながら言った。



もう聞かなくてもわかる。



2年2組、萩(はぎ)さくら。


違反常習犯のハギくんは、今回も違反をしたら生徒指導室に行かなくちゃいけなかった。

生徒指導のこわい先生にマンツーマンで怒られるんだ。




「怒られたくないでしょ?蒲池(かまち)先生こわいよ」

「あー蒲池はたしかに怖いね」

「でしょ?今だったら見逃してあげるから、はやく直して」


「ヤオが直してよ」

「え、なんでわたしが……って。わあっ」



手をぐいっと引かれる。


緩められたネクタイに指先が触れて、びっくりして離そうとするけどハギくんの手はぜんぜん緩んでくれない。


ネクタイはゆるっゆるなくせに、わたしの手は緩めてくれないんだ。