ぐいっと無理やり顔を持ち上げられる。


コンプレックスの瞳を

至近距離で見つめられて──────






「あーあ。また泣いてるし、かお真っ赤」



さっきまでなんの抑揚もなかった声にすこしだけ熱がこもったのがわかる。

髪だけは違反していない黒のまま、ハギくんはにこりと笑った。




「ましろって名前なのに、かわいーね」



我慢していた涙がまばたきをした拍子にぽろりとこぼれ落ちる。


心臓も、じつはずっと止めていた息も、あと涙腺もこれ以上もたなくて。





「こっ、」

「こ?」

「校則違反なので放課後、生徒指導室に行ってください!!!」



めったに出ない自分の馬鹿でかい声にハギくんと、出したわたしでさえも耳を押さえる。



こうしてハギくんにからかわれる日々。


そんな日常に終止符を打ちたくても打てないもどかしさも、このとき口から一緒に飛び出していたのかも。


と、あとになって思ったのだった。