ダッシュで家に帰った。
「奏太ママ〜っ!」
玄関に出てきた奏太ママは、奏太に似てて美人さん。
「おかえり、麻衣ちゃん。早かったわね〜」
「ねぇっ!奏太の好きな人、知ってる!?」
靴を脱ぎ捨てて飛びつくと驚いたように「あらっ」と言った。
「あの子、ついに言ったの?やぁだ、私、聞いてないわよおっ!」
「知ってるの!?」
奏太ママはキラキラ笑顔で私の両手を握ってくる。
「奏太の好きな人、誰?」
「えっ、だから…あら、知らないの?」
「うん。だから奏太ママに聞いて…」
そーいうことねぇ。と奏太ママが理解したように頷く。
「あのねぇ。その子を奏太はめちゃくちゃ溺愛してるのよ。もーベタベタよ」
で、溺愛…?ベタベタ…?奏太が?
「なんだそれ。何言ってんだよ」
「奏太」
いつの間にか奏太がドアの前に立っていて、私が脱ぎ捨てたままの靴を揃えてくれていた。
「あら、奏太帰ってたのね。それより、なんで麻衣ちゃんに言わないのよ?早く言っちゃいなさいよ」
奏太はけげんな顔をしたまま自分の部屋に行ってしまう。
「ごめんねぇ、麻衣ちゃん。あの子はずかしがってんのよ」
あの奏太が。