「あげるわけない。

……麻衣は渡さない」


え?


いきなり抱きつかれた。


「どうしたの?ここ学校だよ?誰かに見られるかもだよ…?」


あわてて引きはがすと奏太はやたらと真面目な顔をしていた。


「約束して、麻衣。今後あいつとは極力関わらないこと。嫌なことされるかもしれないから」


それは……。


同じクラスだし無理そうな気が…。


「お願い」

「……う、うん。気をつける」


奏太が珍しくマジな顔をしているから反射的に頷いた。


奏太は多賀くんのこと苦手なのかな?


「でもそろそろ…行かないと。誰かに見られちゃう」


私は1歩、奏太から距離をとる。


それでも奏太は私の左手を握ったままで。


「……今日の帰り、駅で待ってるから」


ポンポンと私の頭を撫でた。