「そうらしいな」


奏太がベンチから立ち上がると、ん、と手を差しだした。


「なーに?」


本当は分かってるけどわざとこう言ってみる。


ちょっと恥ずかしそうな奏太の顔。


レアだ。


でもそんな恥ずかしさも私にうつっちゃって、2人して顔を真っ赤にしてしまう。


付き合いたてのひよこカップル感満載だ。


前までそんなカップルを見ても、初々しくて可愛いなーなんて謎目線で思ってた。


いざ自分がとなるとすごく共感する。


慣れないし恥ずかしいし嬉しいし。


こういうのを小学生とか中学生で済ませてる子たちは本当に尊敬するよ…。


「奏太はパンとか好きだよね。あっちに焼きそばパンあったよ」


「じゃあ俺はそれにしようかな」


相変わらず多い人混みを進んでいく。


気温も高めな上に人が密集してるから汗ばんできた。


でも、つないだ手が熱いのはそれだけじゃない。






暑いなら、涼めばいいんじゃねーの?


奏太のひとことで古びた外観の建物にやってきた私たち。


さっきまで汗ばんでいた体も、風がスースーするくらいに冷えている…気がする。


「ねぇ、やっぱりやめようよ……怖いよ」


「大丈夫、冷えとかねーと熱中症なるかもだぞ」


それはないよ!


逆に私、気絶して倒れちゃうよ。