「えっと、あの、一人で帰るの寂しいので、一緒に帰ってもいいですか?」

私は言う。

「嫌よ。なんで好き好んで出会って直後の人と歩かなきゃいけないわけ?」

ここなちゃんは私の言葉をバッサリと切り捨てる。
多分、ナンパなんかもこうやって断ってるのだろうなぁ。

「あ、えっと、そうだ!
彰人くんの話も聞きたいかなー、って思って…。」

私の言葉にここなちゃんはため息をつき、

「そっちが本命?
残念だけどあいつ好きな人いるのよ。私はその子と彰人のこと応援してるから、そういう話は一切断らせてもらうわ。」

と言い、去って行こうとしていた。
だから、私は慌てて、

「あの!私が彰人くんとおつきあいさせてもらってる『西窪梨花』です!」

と言った。辺りに人はいなかったが聞かれているかもと思うとドキドキだ。

「はぁ?」

ここなちゃんは眉をしかめてそう言った。
けど、すぐにくすりと笑って、

「…こういう飾らないようなヘンテコの方が好きっていうのは彰人らしいかもね。
もう、この際あんたのその話が嘘でも構わないわ。
少しあなたと話してみたくなった。
いいわよ。一緒に帰りましょうか。」

と言った。
笑顔は薔薇の花によく似ていた。