「天使だわ……」

「天使が……居る」

 その手には、スマホを持っていた。まさか写す気!?
こ、これはいけないわ!!
 鬼龍院さんの笑顔をネットに載せられたりしたら騒ぎになっちゃう。

 そうではなくても……この人。ヤクザの若頭なのに。
これが学校に知られたら大変だ。
 特に教頭に知られたら大目玉だわ。
私は、咄嗟の判断で鬼龍院さんの前に立つと庇った。
 写されないようにする。もちろんブーイングが飛ぶ。
それを見た鬼龍院さんは、きょとんとしていた。

「どうかしましたか?上紗さん?」

「鬼龍院さん。そろそろ外に出ましょうか?」

「えっ?まだコーヒーすら飲んでませんよ?」

「いいから、行きましょう!」

 私は、無理やり鬼龍院さんを連れ出して店内から出た。ここは、危険だわ!!
 鬼龍院さんの笑顔は、ある意味危険だった。
私は、お店から離れた場所に行くとハァッ……とため息を吐いた。

 いや。別に笑顔を独り占めしたい訳ではないけど何だか嫌だった。
 拡散されても困るし……それに。
鬼龍院さんは、鬼龍院さんでまったく、その事に気づいてないみたいだし

 本当に……これでよくヤクザの若頭をやっていけるわね?
 私は、もう一度ため息を吐いた。
何をやっているのだが……私は。

「ちょっとあの辺で休憩しませんか?
僕……自販で飲み物を買ってきますから」

 する私の様子を気にした鬼龍院さんは、そう言ってきた。
 指の指した方を見ると通路に設置してある休憩スペースのソファーが見えた。えっ……?
私は、驚いて鬼龍院さんをもう一度見る。

「ねぇ?」

 鬼龍院さんは、ニコッと微笑んできた。
私を気遣ってくれたようだった……。