鬼龍院さんが無事に戻って来られたのなら約束なんて永遠に有効だ。
 それを聞いた鬼龍院さんは、ホッとしたように優しく微笑んできた。いつもの天使の笑顔だ。

 その笑顔を見ると本当に無事で良かったと思う。
嬉しさと無茶をした怒りで涙がまた溢れてきた。
 ギュッと鬼龍院さんを抱き締めながら
「おかえりなさい」と精一杯伝えた。

「ただいま……」

 するとその時だった。
何だか外の方が騒がしい。また来客?それとも……敵?
 私は、ハッと思い鬼龍院さんから離れると近くに何か武器になりそうな物はないかと探した。
 だがドアは、思いっきり開けられた。

「大丈夫なの!?葵ちゃん」

あ、葵ちゃん!?
 突然病室に入って来たのは、紫の着物を着た中年女性だった。
 髪をアップにしており迫力のある綺麗な人だった。

「か、母さん!?」

 えぇっ、鬼龍院さんのお母様!?
意外過ぎる来客に私は、驚いてしまった。
 まさかの母親が登場するなんて……。

「重勝から葵ちゃんが怪我をしたって聞いて慌てて自家用機を飛ばして来たのよ!!
 大丈夫なの?あぁ、なんて可哀想に……」

 鬼龍院さんのお母様は、そう言いながら私を押し退けて息子の鬼龍院さんを抱き締めた。
 まるで私には、眼中がないようにな態度だ。

「大丈夫だよ……母さん。
ちょっと腕にかすっただけで別状ないって」

「まぁ腕をかすったですって!?
 私の可愛い葵ちゃんの白くて細い腕に怪我をおわせるなんて許せないわ!!
 伊崎組だったわね?今すぐにぶち殺してやるわ」

そう言いながら着物から小刀を取り出してきた。
 キラリと光る小刀の刃に恐怖を覚える。
ちょっと……何を出しているのよ!?