律儀な鬼龍院さんは、大河内幸也にお礼を伝えた。
すると大河内幸也は、クスッと笑い近づいてくる。
 ちょっと……何故近づくのよ?
私は、彼に警戒する。しかし……。

「何……薬がなくなれば、こちらも都合がいいんでね。
気にする必要はないが……そうだな。
 お礼をしてくれる気があるのなら、あんたの身体で返してくれてもいいんだぜ?」

そう言いながら私を挟み鬼龍院さんを押し倒してきた。
 キスが出来る距離まで顔を近付けてきて……って何を考えてるのよ!?
 私を挟みながら鬼龍院さんにちょっかいをかけないで!!
キスさせてたまるかと顔を上げて邪魔をする。
 頭が大河内君の顎に当たり何とか防げた。

「痛いよ……君……」

「罰ですよ!私を挟んで鬼龍院さんにちょっかいをかけないでくださいよ!!」

「えー軽いスキンシップのつもりなんだけどな。
他の人なら喜ぶのに」

 それは、あなたの相手だけですよ!
まったく……油断も隙もない。
 私は、呆れながら怒ると大河内幸也は、クスクスと笑っていた。

 絶対に私をからかっている。
本気なのか冗談なのか分からず対応に困ってしまう。
 するとニヤリと笑うと背中を向けてきた。

「まぁいいや。鬼龍院の顔も見れたし今日は、このまま退散するさ。
 また何かあったら俺に頼れよ?
依頼料は、あんたの身体でいいからさ」

 そう言い残すと立ち去って行った。
な、何なのよ!?あれは……。
 私を気にすることなくちょっかいはかけるし、からかったりしてくるし。

 どうしようもない怒りが湧いてきた。
すると鬼龍院さんが私の手を掴んできた。えっ……?
 振り向くと鬼龍院さんは、申し訳なさそうに私の顔を見てきた。

「あの……あの話ってまだ有効かな?」

あの話……?
 一瞬何を言っているのか分からなかったが、すぐにあのことだと理解する。
 そうだ……無事に終わったら私達は、婚約者として結婚の約束をしたのだった。

「も、もちろんです。無事に終わったんですから」