「じゃああたしこっちだから。バイバイ!」


「あ、うん!ありがとう円香!バイバイ」




近くに住んでいるけど方向が逆な円香とはここでバイバイ。


部活も休んで、こんな時間まで一緒にいてくれた円香。


やっぱり、大好き…最高な親友だと思う。



恥ずかしくて本人には言えないけどね。




「なぁ、緋和ちゃん」


「はい?」




私も翠が来るであろう大通りに向かおうとした時、キクさんがポツリと私の名前を呼んだ。




「バイト、しないか?俺の店で」


「え…?」


「翠から事情は聞いてる。前のバイトは辞めた方がいいと思うんだ。おせっかいかもしれないけど…」




思ってもなかった声掛けに私は驚いた。




どうして、私のためにみんなそんなにも優しくしてくれるんだろう。



大家さんも、翠も、円香も、キクさんも…


私なんかが、甘えてもいいのかな。




「今すぐじゃなくていいから、気が向いたら返事聞かせてくれ。緋和ちゃんいい子だし、俺は大歓迎だから」


「…ありがとうございます」


「いいんだよ、翠が大事にしてる子だ」




大事だなんて…


きっと、そんなことないのに。