「ほら、寝とけ。」
養護教諭の先生がいない保健室。
そんなの漫画くらいだと思ってた。
「別に眠くないんだけどー」
…というか、夏夜が保健室にいるだけで、
漫画空間みたいな非現実的な気分になる。
「何を言ってるんだ、体調悪いんだろ?
いつも姿勢だけは良いお前が授業中に、
頬杖をつくなんて可笑しいんだよ。」
布団を掛けながらペラペラと話す夏夜。
っはぁ~…よぉく見てんなぁ…。
こうやってすぐに人のことに気づくから、
王子様なのだろうなとぼんやり思った。
「…ごめん、ありがと」
実は今日、睡眠不足で絶賛体調不良中。
心身共に疲れ果てていたのだ…。
「昨日なかなか寝付けなくて…」
主に偏頭痛のせいでな!もう最悪!!
「そうか、じゃあ俺は授業に戻るから。」
彼はあたしの髪を梳かすように撫でて、
控えめに微笑むと踵を返した。
一人ぼっち、白いシーツ、消毒の匂い、
静かな保健室、雲行きの怪しい窓の外。
「どうした?…月乃??」
「あっ…ごめん」
気づいた時には彼の袖を引っ張っていた。
初めてだった、人をわざわざ引き留めて、
弱音を吐こうだなんて。