あーもうっ…もう財布空っぽ…。
「あ、あそこ…」
「もうあたしの財布の残金は39円!
ライフは0よっ!?ちゅらい!!」
あたしは涙目で麗菜ちゃんに反抗する。
が、麗菜ちゃんの指差す方向を見て、
あたしはピタリと動きを止めた。
「俺とデートしよ!」
「迷惑です。」
「そう言わずにさー!」
うわぁ…本当にナンパって存在するんだ。
漫画や小説の中だけだと思ってた。
「袖に触らないで。」
女の子は気が強そうでお人形のような顔、
そして何より、着物がよく似合っている。
あの娘に似てる…あたしは簪に触れた。
「おーい!!お待たせー!」
あたしは思いきって大きく手を振る。
女の子はあたしに少しポカンとした後、
もうっ遅いよー!と微笑んだ。
「うぇ!?ちょ、あなた、何して…」
麗菜ちゃんは驚いてあたしの袖を掴んだ。
「ごめんね待った?…で、誰この人」
「知らない人~。」
女の子は男に触れられた和服の袖を、
大袈裟なくらい払ってキッと男を睨む。
「あたしの友達に何か御用?」
あたしの言葉にひぇっと声を上げた男は、
そそくさとその場を去って行った。