「で、なんで急に見学?
今日一日気が気じゃなかったんだが。
てか、嫌われたかと思ってたから。」

リビングの扉を開けながら、

しょぼんとする蛍は…子供みたい。

「私も蛍に嫌われたかと思って。
ほら仕事は逃げられないでしょう?」

「あー、そう…なるほど…な」

リビングに入った蛍が動きを止める。

そこには和服の女性が立っていた。

華美ちゃんよりずっと大人びていて、

和服の擬人化レベル???

「あら、帰ったのね。…その子は?」

「彼女。魅香、地下行くぞ。」

サラッと答えて地下階段へ向かう蛍。

…女性に対して凄く素っ気ない。

「え、いいの?ちょ、待って!」

「いーの、こっち来て。」

私の手を掴む蛍の手はもう、

変な汗はかいていなかった…。

いつもの私より少し低い落ち着く体温。

「はぁ、なんでいるんだ…あの人。」

「えっと、あの人って…?」

地下のドアを施錠する背中に問う。

蛍は溜息をついてこちらを振り向いた。

「息子を女装させる女だ、俺の母親。」

「へぇ、蛍の…えっ蛍のお母さん!?」

あんな若い美人な女性が!?

「え、お姉さんじゃないの!?」